Re: 剣道における「段位」と「強さ」 ( No.1 ) |
- 日時: 2011/02/19 13:54:43
- 名前: とらのすけ<
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- こんにちは。
以前この『剣増や』でも書き込みをさせて頂いた事があったと思いますが、以前から私は『強い剣道』『上手な剣道』という表現で子供達への指導をさせて頂いています。
それは 『試合に対する剣道』と『試験に対する剣道』という意味です。
これが良い表現かと問われれば、『=でなければならない』というか、『別物ではならない』と仰る先生方は多いのではないかと思っています。
しかし 手先や手段で【勝ちにこだわる剣道】では、剣道ではなく『剣術』となるのではないかと思います。
そこを重ねて考える場合、段が低いから弱いと考えられない気がしますし、高段者であるから強いとは別であると考えます。
逆に試合では勝てないけど、『上手だなぁ』と感じる先生もおられるのです。
ですから『段=強さ』ではないと思いますよ。
しかし しかし高段者であり、『強い』と感じる方は多くおられるとも思います。
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Re: 剣道における「段位」と「強さ」 ( No.2 ) |
- 日時: 2011/02/21 01:24:34
- 名前: だみ声<
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- そうですねえ 偉そうなことは言えませんが、誰しも人間ですから、「常勝」は難しいと思います。 と言いつつ生死をかけた真剣勝負を基とする剣道において、一回負ければ「死」と言われれば、そんな真剣勝負など誰しも一生に一度もないのが普通ではないでしょうか? とあれこれウンチクたれ始めると長くなりますねえ。
何かと話題の相撲界ですが、それはさておき横綱も十両に負ける事はある。 一方野球では、無名の投手がノーヒットノーランを達成する事もある。 100mを10秒台で走る短距離選手に、平均12秒の陸上部中学生がアクシデントなしでは勝てない。中学生がその時だけ10秒以下で走れる事は考えにくい。または短距離選手がその時だけ12秒以上かかる事は考えにくい。
今回ご紹介のケースは、おっしゃる通りラッキーパンチと見る事も出来るでしょうが、若手体育会系大学の三段ともなると、起こりうる事ではないかとも思います。 あくまで想像の域を出ない事ではありますが、延長までもつれこんだこの試合、新進気鋭とはいえ40代七段の体力は、20歳前後の若者三段にどれだけ勝っているでしょうか?
そう言う勝負の流れの中で七段:三段が、一般的感覚を覆して三段の抜き胴が決まる事は結構ありうると感じます。 あえて言うなら、延長になるまで勝負を長引かせた七段に戦略上の「油断があった」と言えないでしょうか? もちろんそうならざるを得ないぐらい若手三段はこの日「乗っていた」事になります。 そして勝利の女神が若手にほほ笑んだ、と言う感じかな?
では、段位と強さの相関関係とは何か? トータルにたとえば100本勝負などをやると七段:三段では90:10とか80:20当たりが出てくるのじゃないかと思いますが、どこにもそんなデータはありません。 言える事は絶対100:0ではないと言う事です。 これが七段:初段とかそれ以下の場合でも100:0ではないと言う事で、ラッキーパンチもあり得ます。 僕の解釈ですが、段位とは「錬度」であって、単に打突技術の優劣だけでは取得できないもの、いっぽう強さとは試合で審判の旗を上げさせる「竹刀運用技術」の優劣を言う、と思っております。
>大学の彼が例えば5段位の実力があるとすれば、年齢制限で縛っている今の段位取得基 >準が適正な基準であるのか疑問に感じます。 ここでおっしゃる「5段ぐらいの実力」とは「竹刀運用技術」の事であって、錬度を 伴ってなかったら、やはりそれは真の5段ではないと言う事と僕は理解しております。
では「錬度」とは何ぞや? これを論じ、それを感じる事に興味のある人が、「剣道家」ではないでしょうか? そんな曖昧模糊として得体の知れない、数値化できないものを持ち出して、大した実力もないくせに、へ理屈こねる剣道なんて「つまらん」と思えば剣道なんかやってられないはずです。
蛇足ですが、 その試合の後、七段と三段は、挨拶なりして、お互いの感想なりを2人の間で語り合ったのでしょうか? 勝負の後でそんなことが必要か? とのご意見もあるでしょうが、それをやってお互いを認めあってこそ剣道における「交剣知愛」なのですが、いかがでしょう?
もう一つの蛇足(想像ですが…) 数年後同じ2人が対戦したとしましょう。三段の若者は五段になっていたとしましょう。 そして、攻防の末七段が勝ったとしましょう。 試合の後の二人の会話を想像します。 若手「ありがとうございました。 今日は完敗です。」 七段「あれからかなり修行されましたねえ。 あの時より格段に強くなっておられますね」 若手「おそれいります。あの時勝たせていただいてから、これではいかん。 もっと修行 せねばあの方に追いつけない、と思って稽古しました。」 七段「とんでもない、あなたはすでに僕の及ばないレベルですよ」 若手「そんなことありえませんが、お言葉嬉しく思います」
不思議なことと思われるかもしれませんが、僕が剣道を研究するのは、こういう会話を聞ける環境がある剣道が面白く、興味が尽きないからです。 上の会話は、若手が勝っていても似たような内容になるんじゃないかと思います。
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Re: 剣道における「段位」と「強さ」 ( No.3 ) |
- 日時: 2011/02/21 18:36:32
- 名前: 剣風
- 私の様な剣道素人の素朴な疑問に真摯な回答をいただきまして、まずは御礼申し上げます
とらのすけ様
<しかし 手先や手段で【勝ちにこだわる剣道】では、剣道ではなく『剣術』となるのではないかと思います。
なるほど、剣道=剣術でないように強さ=段位でないと言う事ですよね。 ただ剣道を知らない一般的な感覚ではやはり段位は強さを現すものとしての 尺度と言う捉え方をしてしまいます。 実際、高段者の先生の攻め方は見ていてやはり「強さ」を感じる事が多い気がします。 ご回答有難うございました。
だみ声様
相撲での例えの件は、本当によくわかりました。確かに横綱でも十両に負けることもありますよね。それを考えれば今回のケースは、だみ声様がおっしゃるように、7段の先生の試合運びでの「油断」と3段若者の「乗り」が複合した結果なのかもしれません。 それと、体力の件ですが私も試合を見ていてそう思いました。私も7段の先生と多分年格好は同じくらいだと思いますが二十歳の若者とせめぎ会う自身すらありません。実際、バネのある肉体から次々打ち込まれる竹刀には、7段の先生がよく捌いておられるなと感じました。 段位は「錬度」強さは「竹刀運用技術」であるという事ですね。 やはり、とらのすけ様と同じで「段位」と「強さ」には違いがあるとの事。 なかなか素人には解りづらい点もありますが、別尺度で推し量るものであることは十分理解できました。今後はそういう観点で観戦して行きたいと思います。
さて、試合後の2人の様子についてですが試合後は若者が走って先生の処へ行き挨拶をしていました。何の話をしていたのか判るわけも在りませんがお互い笑顔で話されていた事は覚えています。 7段の先生はそこでその日の試合が終わられたわけですが、背広に着替えられてその若者の試合を数試合見ておられましたのは印象的でした。どのようなお気持ちで観戦されていたのか聞いてみたい気がいたします。
だみ声様がおっしゃるような素敵な会話がこの二人に将来なされるかも知れないと考えると、なんか私もワクワクしてしまいます。こういう事が皆様が剣道を続けられる理由の一つなのですね。
色々な切り口でのご回答有難うございました。
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Re: 剣道における「段位」と「強さ」 ( No.4 ) |
- 日時: 2011/02/25 01:35:59
- 名前: だみ声<
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- すみません、4日間出張しておりまして失礼しました。
>試合後は若者が走って先生の処へ行き挨拶をしていました。 >背広に着替えられてその若者の試合を数試合見ておられましたのは印象的でした。
お二人の間でどのような会話があったのかは、分かりませんが、上記の部分を読ませていただき、またまた剣道に対する興味が増加したのは事実です。 たぶん大学生三段の若者も、礼法も合わせて「武道」を指導されているのだと思います。
彼は単に「七段に勝った」と奢る剣士ではないと思います。 あくまで試合の流れで起死回生の「抜き胴」がうまく入ったけれど、自分にとっては攻めて崩して溜めて「居着き」状態にさせて取った一本ではない、と言う感覚があったのだと思います。
そして七段先生も「その後彼がどのように戦うのか」を着替えた後もご覧になっていたと言う事から、立派な剣道家なのではないかと推測します。 ただし当然のこととして、「彼の剣風」を「見取り」しておられた事も事実でしょう。
いずれにしても単に「勝った負けた」だけでない場面が展開していたことが大変うれしく感じました。 ありがとうございました。
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