- 日時: 2009/09/30 21:12:06
- 名前: 凛美優
- 『誠の父』先生。はじめまして。
ご指摘の『斬るように』というのは大変難しいことですね。私も初めは良く分からなかったのですが、最近、実感として分かってきたことを踏まえ、私なりにご紹介してみたいと思います。
剣道初心者や経験の浅い方は、竹刀を面や小手や胴に『当てる』という概念しか持てない場合が多いようです。なので人の試合やお稽古を見ても、『当たっているのに何故一本にならないの?』って思われることが、たくさんあるのではないかと思います。剣道では、物理的に竹刀が面胴小手に『当たる』ことを要件とはしておらず、予め定められた『有効打突』という技の繰り出しを競い合う武道として位置付けられています。ですから、相手の身体に竹刀で叩いても、防具の上でも、防具のない所でも、一本ではなく、認められません。
『斬るように打て』という教えは、『有効打突』を繰り出すための説明表現であって、かつてはそう表現した方が理解され易かったのかもしれませんね。私の子どもの頃は、当たり前のように言われてました。
剣道で求め合う『有効打突』とは、『充実した気勢』『適正な姿勢』『(所定の)竹刀の打突部で』『(所定の)打突部位を』『刃筋正しく打突し』『残心あるもの』というように、たくさん要件があり、それらを同時に全部満たしていなければならない技のことです。
『斬るように』という表現は、『有効打突』を構成する要件のうち、特に『(所定の)竹刀の打突部で』『刃筋正しく打突し』という2点を一言で表現したものではないかと思います。恐らく指導者から『斬るように』という言葉が出る時には、その竹刀の振りが、刀で振るかの如く竹刀が振られていない場合だと思います。
『(所定の)竹刀の打突部』とは、これも規則で決まっていて、竹刀の中結周辺(竹が露出している刃部にあたる部分のうち、切っ先から計って約1/3 から1/4 の辺りで『物打ち』といいます。)のことです。
『刃筋正しく』とは、剣道では打つ場合は必ず、竹刀の弦と反対側の面が打つ部位に接するように打たなければならないものと指定されています。突きの場合には、弦の張っている側が天を向いた状態で突かないと『刃筋正しく』にはなりません。
竹刀は断面が丸い状態の棒状のもので、本当の刀とはだいぶ形状が異なります。しかし剣道では、そんな丸い竹刀を、所作・作法等も含め、『刀のように取り扱う』という精神で統一化されていますので、刀の刃筋を竹刀で実現させるために、かかる規則がわざわざ決められています。
ですから、たとえ竹刀が面に当たっても、竹刀が物打ちで打っていなかったり、弦が下を向いて竹刀が回転していたり、あるいは竹刀が打ちに際し振られることもなく『刺し面』化して、しっかりとした『充実した気勢』ある打ちとなっていない場合には、『有効打突』にはなりません。
よって、刀の操作で上手く出来ないような動きをもって、竹刀で打突しても、それは原則として『有効打突』ではないという基本的理解を初めのうちから持っておいた方がいいかもしれませんね。
ちなみに、刀は切っ先から鍔元まで刃になっているのに、『物打ち』部分で打つということに、何故なっているかというと、それも理由があります。 刀を柄部分を取って鉄だけの裸にして、二本の棒の上に横向けで置くと、刀と棒が接する位置が、ちょうど切っ先から約1/3 のところで、刀が自然に刃を下に向けて回転し立つように起き上がります。刀には反りがあるためそうなるのですが、即ちそれは、刃のその地点に振りの威力が集中し最も力が強まる部分を現しているので、剣道では、その物打ちという位置に重要性があります。
また『刃筋正しく』する練習として昔から有名なのは、新聞紙を広げ両隅を2人におのおの片方ずつ持ってもらい、ピンと張った状態にして、木刀でその紙の中央を振り下ろし、まっすぐ2つにキレイに切れますかっていう半分遊びの練習方法があります。刃筋が下に向き真っ直ぐ冴えのある状態で振り下されれば、新聞紙はキレイに2つに切れます。変にぐちゃ付いたり破けた場合は、刃筋が真っ直ぐではないということです。
長くなりましたが、何かあればまたご返信ください。よろしくお願いします。
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